2007年10月25日

ハワイでボーン4(最終回)


さぁ、いよいよ釣りだ。
「ボーンフィッシュの経験はあるの?」
「ない、まったくの初めて」
「そうか……(ラースの表情が一瞬不安そうに見える)」

この日の僕のタックルは、
スコットのソルト用ロッドX2Sの9フィート8番、リールはロスリールのモーメンタム5、
ラインは1番手上の#9のエアフロ・リッジボーンフィッシュテーパー・フローティング。

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海の魚を釣るには、とにかくリールの性能が一瞬のチャンスを左右する大切な要素だということを、このあと実感することになる。この日唯一の魚が沖に向かってものすごいパワーで疾走した時、相棒は最後の最後まで安定的した挙動でラインを制御しつつ送り出してくれた

フラットを歩き始めて1時間半。1回もキャストできずにいた。
遠くに見つけたテイリングがそのまま消えたり、ようやく目の前に来たテイリングが、
「次にテイルが見えたらキャストだ!」というラースの指示の次の瞬間にまた遠ざかったり、
途中、このままだったらオデコも覚悟かなというくらいの展開だった。

でも、ラースは集中力を切らさずとにかくテイリングを捜してくれ、正午の満潮の少し前、
ようやくマングローブ林が外のフラットと接している場所で、
この日初めてキャストできる絶好のテイリングを見つけた。
それまでひたすら自分に言い聞かせていたのは、
チャンスが来たら失敗してもよいからとにかく落ち着いて投げること。

「キャストだ! 魚の向きが見えるかい? 頭の前2m!に」
ラースの声が興奮している。
キャスト……着水と同時くらいに、魚がクルッと反対側に向きを変えたのが見えた。
!!!!!  2〜3尾が底をほじくってエサを食べているのが偏光グラス越しにはっきり見える。
「もう1回キャストだ。もう1回投げて!」
ラースもまだ興奮している。
落ち着いて、落ち着いて、そっとピックアップしてすぐにキャスト。
キャストし直したのが、1回だったか、2回だったか、うまく思い出せないのだけれど、
突然、フライが落ちた場所に向かって、2尾の魚が猛然と近づいて来るのが見えた。

(今、絶対にフライに反応している!)

2秒か、3秒か、一呼吸待った。それから、そっと利き合わせるようにラインをリトリーブした。
すると、1尾の魚がなんとなく沖に向かって走り出す。最初はゆっくり、
すぐに何かに気付いたようにスピードを上げて……

「ヒットだ! ラース、ヒットした!」
笑われてしまうかもしれないが、今思うとその時の感覚は、
近所の多摩川で底のエサをついばんでいるコイを、
フローティングラインの先に黒いエッグフライを沈めて
静かにリトリーブの利き合わせで釣っていた時にそっくりだった。

「ザッツ、グッドサイズ!」とラースが叫んでいる。

でも、そこからはまったくの未体験。ギュイーッと鳴っているリールに目をやると、
ラインはとっくになくなってバッキングがどんどん引き出されている。
最後は、「このままじゃスプールが見えちまうんじゃないか?」と真面目に心配になった。
ラインの先にスクーターでも付いているようで、明らかにどうにかなるもんじゃない
圧倒的なパワーが伝わってくる。

ラースはラインが突き刺さっている遥か沖に向かって一目散に走っていた。
僕はある程度のところからリールを巻いてその後ろを追いかけ、
ラースがようやくラインを掴んで手繰り寄せると、魚は僕とラースの
間で思ったよりも大人しく身を休め始めた。

「大丈夫、キャッチして」とラースがいう。
ちょっと意外だったけれど、そういうものかと思い、
右手を水中に突っ込んで一気に「でかいな」と思ったボーンのテイルを掴んだ。

「ナインポンドはあるよ、いいサイズだよ」とラースがいう。
大きいなとは思ったけれど、何せ初めての1尾なので比較のしようがない。
でもやっぱり、それはいい魚みたいだった。
ちょっと間の抜けた顔だとは思うけれど、とにかく「きれいだ」と思った。
フライはラースが巻いたもの。
このあともいろいろなことがあったのだけれど、終わってみれば、
僕のラッキーなハワイ釣りはこれがクライマックスだった。

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いろいろな人に支えられ、幸運にも手にできた1尾。
ちなみに、ガイドのラースはハワイでの学業を12月には終えてアメリカ本土で働きたいとのことで、
ボーンフィッシュのガイドのアルバイトは12月の半でやめるつもりらしい。
興味のある人は、年内にコンタクトしてみるのがおすすめです。













flyfisher_magazine at 12:12│Comments(0)TrackBack(0)clip!

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