2009年03月13日
小さな湾の端っこで
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先日、午前3時という中途半端な時間に起きて、朝マヅメを釣ろうと、
とある港の隣に広がるゴロタ場でフライロッドを振ってた時のことです。
そこは小さな湾の端っこで、遊歩道の終点にほこらみたいのが建てられてて、朝方になると散歩する人たちが多く訪れます。遊歩道を利用してほこらのところまで来たらUターンするっていうのが定番のコースなんです。
遊歩道終点のちょっと先で、えっちらおっちらフライロッド振ってたら、突然♪ララララ〜♪とオペラ歌手ばりの美声が聞こえてきました。
ざっぱーん! 結構海がシケてたので、うっかりスズキでも、と思ってたのですが、ざっぱーん!とざっぱーん!の間に♪ララララ〜♪とか♪ルルルル〜♪なんて歌声が聞こえてくるんです。
ちょっと釣りに集中できないくらいの声量だったので、振り返って見ました。
すると山下清似のおじさんが、大声でほこらに向かって何やら大声を発しています。
何を言っているかは聞き取れないのですが、そのうち腰に手を当て、奇想天外な踊りを始めました。
むなしくリトリーブを繰り返しているだけの釣りに飽きていた頃だったので、煮しめたTシャツ姿のそのおじさんを横目で観察してみました。
偏光グラス越しに見るおじさんは、ほこらの次は海に向かって大声で歌い始めました。
その声はおじさんの顔からは想像がつかないほど美しく、
5分後にはオリジナリティー溢れる踊りが付け加わえられていて、前方の水平線からは美しい日の出が現われ、奇怪な踊りと歌を聴きながらというなんともいえないある意味幻想的な朝を迎えてしまいました。
車に戻るにはそのおじさんの目の前を通らなければなりません。
できれば関わりたくないなぁ、という心の声が彼に聞こえちゃったのでしょうか、
トリッキーな動きをしながらおじさんが「おっはようございます! 私はここで毎朝歌ってるんですよ!かくかくしかじか…………」
聞いてもないのに自己紹介が始まりました。
適当にほほ笑みを返しているうちに、それほどやっかいな人ではないということが分かってきました。
要約すると、雨の日も晴れの日も16年間毎朝ここで歌うことが、彼の健康法ということ。大海原に向かって大声を出すことがどれだけすばらしいストレス発散になるかとか、そのおかげで風邪しらずだとか。近隣のホテルに滞在するお客とも知り合いが多く、地元じゃちょっとした名物おじさんだとか。
やけにうまい歌、美しい声とその余りある声量、そして個性的な踊りなど、ボクの聞きたいことにはいっさい触れずに、自分のことをとてもうれしそうに話続けるおじさん。それ以外にもツッコミどころ満載だったのですが、貴重な朝マヅメの時間を逃したくないのと、話が長くなりそうだったので、謎は謎のままそっとしておくことに。
小さな湾の端っこ。おじさんとは反対側に位置する堤防を覗きに行って帰ることにしました。釣りとしては異常なしでしたが、湾を挟んだ対岸から、向かい風にもかかわらず、おじさんの美声がいつまでも鳴り響いてました。(ワカノ)